空間マーケティングの代表例：体験型店舗

MITの社会心理学者カート・レヴィン（米国NTL所属）によると、文章で読むよりも実際に「聞く」「見る」などの直接体験の方が記憶に残りやすいとされています。この心理を応用したのが近年の大きなトレンド、体験型店舗です。

多くの家具ブランドもオフライン店舗を運営し、来店者は実際に家具を見たり座ったりできます。しかし、体験型店舗は従来の店舗との差別化がポイントとなります。

• 従来のオフライン店舗：商品の販売が主目的

• 体験型店舗：購入しなくても楽しめる空間。ポップアップストアや旗艦店が代表例
  
  

ポップアップストアと空間マーケティング

韓国ではポップアップストアが新しい空間マーケティングとして急成長しました。Naverの検索データによると「ポップアップストア」の検索量は過去7年間で400%以上増加。2024年8月、聖水洞エリアだけで89店舗が開催されました。

出典：OpenAds Sweet Spot記事 – Naver DataLab統計

こうした店舗は「インスタ映え」するデザインが多く、来場者はSNSに写真を投稿し、自然に口コミが広がります。

ポップアップだけでは不十分：差別化の必要性

ポップアップストアは業種を問わず広がったため、消費者にはもはや珍しくありません。そこで空間マーケティングで差別化が必要になります。

• リテールセラピー：買い物だけでなく、カフェや美術館のように癒しを提供する空間

• 他ブランドとのコラボ：新しいコンセプトや世界観を取り入れ、新鮮さを演出

大切なのはトレンドを追うだけではなく、**「自社のブランド哲学を体験空間でどう表現するか」**です。

出典：The Hyundai Seoul

空間マーケティング 事例：新世界カサ

代表的な空間マーケティング事例のひとつが新世界カサです。リテールセラピーやコラボ企画を取り入れ、ブランド哲学を体現しています。

その結果、2024年の年間売上は約2695億円、営業利益は約10億円を達成。2023年比で約14.6%の成長を実現し、赤字から黒字へ転換しました。

1. 新世界カサ 狎鴎亭フラッグシップ

単なる家具店ではなく、空間・家具・アート・食が融合したライフスタイル型体験店舗。

テーマは「イタリアンアパートメント」で、高級住宅に入り込んだような独自のコンセプトです。

出典：新世界カサ公式サイト

特に注目は「ファニチャーアートギャラリー」。家具を芸術作品と並べて展示し、ブランドを芸術的に位置づけています。

出典：新世界カサ公式サイト

また、照明ギャラリーでは世界のプレミアムブランドを体験可能です。

出典：新世界カサ公式サイト

カフェ「OUYA」とのコラボでは、ベストセラー「カンポソファ」をモチーフにした特製メニューを提供。家具と食の融合体験を実現しました。

出典：新世界カサ公式サイト

2. コラボ型ショールーム店舗

新世界カサは サムスン電子、スターバックス、Wine & More などとコラボし、革新的なショールーム空間を展開しています。

出典：新世界カサ公式サイト

これらの店舗は、新婚夫婦やファミリーなどのライフスタイルに合わせたリアルな住空間としてデザインされています。

出典：カサミア デジタルプラザ瑞草本店

新世界カサのユニークなVRツアー

新世界カサはリテールセラピーやコラボ企画に加え、もう一つ独自の空間マーケティングを導入しました。
それが Archisketchのショールーム来店者向けVRツアーサービス です。

VRを活用することで、新しい形の体験型店舗を実現し、ブランド哲学を鮮明に伝えています。

来店者視点で体験してみましょう。相談後にスタッフが顧客の自宅間取りを3D化し、自宅そのものが体験型店舗になる仕組みです。
馴染みある空間が新しい発見を与え、強い印象を残します。

出典：Naverブロガー「ShuShuShunShun」– 狎鴎亭店レビュー


顧客は自宅の間取りにカサの家具を配置し、VRで再現可能です。
店頭で家具を見るだけでなく、自宅にソファを置いてVRで体験できるのは非常に説得力があります。

こうした体験を通じて、カサは「おしゃれな家具ブランド」ではなく、暮らし全体を快適にするブランドとして認識されます。
VRツアーはブランド価値を直接的に伝える手段なのです。

出典：新世界カサ公式サイト

大規模ブランドであっても、すべての店舗を狎鴎亭店のように特別に設計するのは現実的に困難です。しかしVRツアーがあれば、通常のショールームでも差別化された体験を提供できます。

また、多くのポップアップや旗艦店がソウル首都圏に集中する一方で、VRツアーはオンライン対応のため、地方や遠方の顧客も時間や場所を問わず体験可能です。

出典：Naverブロガー「ShuShuShunShun」– 狎鴎亭店レビュー

=他の空間マーケティング事例：ハイマート

オフライン空間でArchisketchを活用し、ロイヤル顧客を獲得しているブランドは他にもあります。
韓国大手家電量販店の ハイマート は、不況下でも営業利益275%増を達成しました。

👉 不況でも営業利益275%成長の理由、ハイマートのArchisketch活用事例

大規模なポップアップや旗艦店に予算を割けない場合でも、経済的かつ効率的に顧客を獲得できます。

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